96歳、現役バーテンダー、
だった・・・
と、書いたが、
そう、昨年の11月にお亡くなりになられた。
芸術系の学校に行かれ、
絵画もお書きになり、
切り絵の名人、
大戦中は衛生兵として活躍、
昭和35年、銀行から融資まで受け、
渡欧、単身IBA(国際バーテンダー協会)の
会議に乗り込んだ。
正に侍バーテンダー!
その氏の書かれた一冊の本から、
私は色んな事を学んだ。
氏は、カクテルの技術や、
知識、教養は勿論だが、
型にはまらないバーテンダーと言う事を書かれている。
ご自身が、切り絵をされる事も、
バーテンダーは、
エンターテイメント性も大事である。
と、私はその本から読み取った。
その頃から、
私も店にギターを置くようになった。
その事で故「桑名正博」氏もよく来られ、
音楽を通じてのお客さんも増えた。
が、それに偏ってはいけない、
酒の知識、カクテルの技術があってこそである。
しかし、幾ら努力し、考え、改良したカクテルでも、
その人に、合うかどうかの問題である。
こういう、一節がある。
カクテルをお出ししたら、
美味しさのあまりお客さんが泣き出したと、
が、氏は書かれている。
「誰にでも合うというものではありません」と、
私も、常に何千回、何万回と言って来た。
「美味しい物くれ!」
「お任せ!」
は、無理だと、
いきなり、そう言われても出しようが無い、
海岸で落としたコンタクトレンズを、
探すような物だ。
いや病院に行っていきなり、
「治してくれ!」
と、言っているのと同じ、
まずは、カクテルを飲みたいのか、
ウイスキーを飲みたいのか、
日頃は何を飲んでるのか、
カクテルなら、ロングかショートか、
フルーツ系か、ソーダーか、
沢山聞けば、聞くほど、
外す確率も少なくなる。
外して貰いたくないから、
一生懸命聞いているのに、
大阪人のせっかちな癖が邪魔をする。
氏はこう続けている。
「たまたまその方の好みに
合っていたのです」
が、たまたまだろうか?
百戦錬磨の凄腕バーテンダーの、
なせる業だったと、
私は思う、そしてキャリア、
店の雰囲気、
全ても物が、
その一杯を最上の物に、
押し上げたのだろう、
が、このたまたまと言われる。
謙虚さが大事だと言う事だ。
多くの事に気づかせて貰い、
多くの物を学んだ。
「ミスターバーテンダー」
「山崎達郎」さん、
お疲れさまでした。
そして、心から、
ご冥福をお祈り申し上げます。
駆け出しバーテンダーより・・・
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