黄昏ウイスキー  TWILIGHT WHISKY

大阪は京セラドーム前の小さな本格的BAR「BARin」の日記 

自家製 ミント

もう少しで15年になる。
この下町でBARを出す事の難しさを、
改めて痛感している。


今週も3組、
全くBARと言うお店が何なのか、
解らない方が来られた。


案の定「おすすめは何ですか?」
「スコッチを下さい」


「・・・・・」
ウイスキーやカクテルは経験値が必要だ。
今まで何をどれぐらい飲んだが、
人それぞれ、お出しするものは違うのだが、
まあ、適当に出しておけば、
何事も無いのだが、


折角来られたのだから、
その人に合った物を出してあげたい、
それが逆に逆鱗に触れる。


経験が無いといきなり個性的な物は無理ですよ、
と、言うとキレる。

「あんな、私は週に3日は飲んでるわ!」

そういう意味では無い・・・
どうして伝わらないのか、
私が馬鹿なのか、

もういいかと思ったら、
「薬臭いのは止めといてや」

ん?アイラモルトか?
「あれ、あれ、ボウボウ」

ボウボウ?
ボウモアか?

「あれは飲まれへんわ!」

だから私はそれを聞いているのだ。

ここまで来るのに15分以上掛かった。
そして最近解ったのは、
私は一生懸命説明するが、

殆どの方が、
聞いてない、覚えようともしない、
まあ興味が無いのだろうが、
では何故BARに来たのか、


それが不思議だ・・・
何故BARに来る。
何を求めて、拘りとお酒しかない、


あれは高い、これはいくらだ。
なら家で飲めばいい、
いや、お酒等飲まず貯金すればいい、

この前も当店の前で育てているミント、
これが唯一下町の場末のBARの特権、
店の前で燻製は出来る。
バーベキューは出来る。

ミントを育てる事も出来る。
都心のBARでは考えられないだろう、

土から生えたミントはスーパーのとは違い、
「青」と言う味が入る。


まあ、抽象的な表現では解らないだろうが、
それを使っていると、

「タダで良いですね」

「・・・・」

やる気を根こそぎ引き抜いてくれる。
タダ?
そういう事を言う人は、
多分、まだ親に養って貰っているのだろうか、



種もお金を出して買っている。
土もお金を出して買っている。
肥料もお金を出して買っている。

ましてや水道代と言うものを知らないのだろうか、
スーパーで切れたら買う方が、
手間暇も掛からない、


唖然となる。
多分こんな事を言う人が、
号泣会見をするのだろう、

種も500粒を数袋買うが、
そこから芽を出すのはほんの僅かだ。
「摘みたてですか良いですね」


と、言うのが普通なのだが、
今、その普通が解らない人が急増している。
「タダで良いですね」と言われたら、
隣で飲んでいる人もいい気はしないだろう、
BARは一人で飲む場所では無い、
多くの人達で飲む場所なのだ。
周りに気を使いたくなければ、
家で飲みましょう!
そんな事をよそに、


ミントの花が咲き出した。