初めは、小学生の時だった。
漫画「包丁人味平」
これを読み続け、憧れ、
自分の店を出したい、料理人になりたいと、
小学校の卒業アルバムにも書いている。
その気持ちは高校まで続き、
色んな飲食店でアルバイトをしたが、
まあ、大きなチェーン店だったので、
自分の思い描くものとは、
かけ離れ、単なる大きな機械の中の、
小さな部品のように思え、
働いていても、やる気も出ず、
常に冷めた状態の自分が居た。
高校を出てからも、その思いは続き、
知り合いに頼まれ、夜の世界に入り、
小さなラウンジで、突き出しや、
一品等、色々と作ったが、
まあ、ド素人、何をやっても失敗の連続、
と、慣れない夜の仕事でダウンし、
入院する事になった。
今から、考えれば大した事では無いのだが、
当時の私からすれば、大きな挫折だったのだろう、
そんな時、一時的なブームで、
現在のお洒落なカフェバーとは、
少し違い、かなりBARに近い、
カフェバーなるものが、あちらこちらに、
出来始めた。そんなある日、繁華街を歩いていると、
高校時代の友人に出会った。
カフェバーの厨房で料理を作っていると、
言うので、早速店を訪ねた。
大阪はミナミの繁華街、かなり高級感のある店内、
妙に緊張していると、店長の顔に見覚えが、
それが、まさかの中学時代の同級生、
その店には二人の同級生が居た。
その店長は、若くしてロンドンに渡り、
本場のBARで働いた経験があると、
色んな話を聞かせてくれた。
今ならともかく、当時は、
ロンドンに渡るなど、
私の許容範囲では考えられなかった。
が、確か、その時初めて、
バーテンダーを見た。
大型チェーン店の厨房や、
ラウンジで一品を作るのとは違い、
その華やかさに、驚いた。
それから、暫くして、
一冊の漫画に出会った。
「BARレモン・ハート」この漫画を読んで、
その後の私の人生は、決定的なものとなった。
人生とは、摩訶不思議なものである。
漫画により左右される。
が、逆に言うと、人の人生を、
左右させる漫画と言う事でもある。
その漫画を描かれたのが、
古谷三敏氏、その悲報がネットに上がった。
未だに連載中だった「BARレモン・ハート」
もう、新作は読めないのかと思うと、
残念で寂しいが、今日の私があるのも、
そして、自分で店を出して26年、
この仕事で、子供も2人育て、孫も出来た。
私にとっては、かけがえのない漫画であり、
古谷さんには感謝しています。心からお疲れさまでした。
そして、心よりありがとうございました。
2021年12月14日
58回目の誕生日に記す。
坂本 雅央