黄昏ウイスキー  TWILIGHT WHISKY

大阪は京セラドーム前の小さな本格的BAR「BARin」の日記 

大阪ウイスキー物語 12

「たった一行に誇りを感じて」

竹鶴を支えた最後の大阪人、
最大の株主「加賀正太郎」と、
竹鶴の関係がギクシャクしてくる。
安いウイスキーを造れと言う加賀、

しかしそれを竹鶴は拒む、
当時の3級酒は原酒の混和率が、
0%〜5%だった。

0%??

あまり書きたくもなかったが、
0%でも良かったのだ。
昔私の父が安い酒はすぐに酔える。
何か入っていると言っていたが、

逆に何も入っていなかったのだ・・・

仕方なく竹鶴は3級酒を造るが、
その際、最大上限の5%まで原酒を入れ、
抵抗する。

この酒税法の混和率は、
昭和43年の改正まで続く、
昭和43年まで、原酒が全く入っていない、
得体の知れない、「ウイスキーもどき」は売られていたのだ。
しかしその改正でも 2級酒は 7%以上(13%未満)だった。

喉頭癌を患った「加賀正太郎」は、
死期を悟り、
「芝川又四郎」と共に昭和29年7月、
大阪は船場生まれの「山本為三郎」に株を譲渡する。
この時芝川氏は「株の譲渡は必ずニッカにとってプラスになる」と、


山本為三郎」そう朝日麦酒
(現アサヒグループホールディングス)社長、
その芝川の言葉通り、ニッカは一流企業の体制を整えて行く、
この時既にニッカの株の過半数は、
アサヒビールが持っていた。

2001年にニッカはアサヒビールの完全子会社化し、
アサヒビールグループの一員になるが、
それはいきなりそうなったのでは無いのだ。


山本為三郎氏は、竹鶴氏がスコットランドに旅立つ時、
神戸港に見送りに来ている。
ニッカとアサヒには昔から妙な縁があるのだ。


これでニッカを多くの大阪人が、
支えた事がお解かりになったと、
思います。
そして長々と書いてきた「大阪ウイスキー物語」
これを書くきっかけとなった一文、
たった一行に私の胸は躍り、
誇りを感じた。


琥珀色の夢を見る」(松尾秀助著)
の中にその記述を見つけた。
では、抜粋、引用させてもらいます。

「創業から1年半して大阪から待望の単式蒸留器が届いた」


大阪から?
松尾秀助氏がこう記している。
それは芝川氏の回顧談「小さな歩み」1969(非売品)
の中に書かれていると、
「機械も、大阪の市岡にある小さな
北川鉄工所に私が設計して、つくらせる」と、


これは、当店の近郊に住む者しか、
解らない話で、この文献を読んでも、
私ぐらいしか反応しないだろう、
「大阪の市岡にある北川鉄工所に作らせる・・・」

私の店の前に橋が掛かっている。
「岩松橋」それを渡れば、
大阪は港区南市岡、

ニッカウイスキー余市の蒸留器、ポットスチルは、
この記述が正しければ、
すぐ隣の町、港区市岡で作られた事になる。
大阪で市岡と言う地名は港区しか見当たらない、
又、市岡には確かに小さな鉄工所が沢山ある。



長々と書かせて戴いた「大阪ウイスキー物語」
大阪人がニッカウヰスキー誕生に、
大きく関わり、サントリーさんは勿論、

ニッカも大阪で生まれたと言っても、
過言では無い気がします。
余市蒸留所の蒸留器が大阪港区市岡で、
作られたのなら・・・
この謎は又次回に!


最後に、多くの大阪人が守ったウイスキーを、
多くの大阪人に飲んで頂きたいと、
飲まないのは悲しい事だと、
「芝川又四郎」氏が生きてたら、
そうおっしゃるかもしれません。

          完
※現在、ポットスチルを製作したのは、
渡辺銅工所と判明しましたので、
北川製作所では無いと言う事になります。

参考文献 琥珀色の夢を見る        「松尾秀助」
     小さな歩み 1969(非売品) 「芝川又四郎」
     柔道の国際化と礼法に対する関心 「マイケル・カラン」
     ウイスキーに捧げた男たち
     「凛として」第1回〜第9回 
http://www.nikka.com/world/sticking/gallant/
     千島土地アーカイブ・ブログ
     加賀正太郎と竹鶴政孝と芝川又四郎と
http://blog.goo.ne.jp/chishima-archive/e/f51b89c369c95c9a1a0fa6e519d705d4
     竹鶴政孝   Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%AB%B9%E9%B6%B4%E6%94%BF%E5%AD%9D
     ニッカウヰスキー Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8B%E3%83%83%E3%82%AB%E3%82%A6%E3%83%B0%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%BC