黄昏ウイスキー  TWILIGHT WHISKY

大阪は京セラドーム前の小さな本格的BAR「BARin」の日記 

姉・・・

私には兄が一人、
姉が二人、
少しややこしいがその下にまだ年の離れた妹がいる。
まあ、それはいいのだが、


上の兄はどこに居るやら・・・
上の姉は書くと怒られる・・・
そして下の姉だが、
まあ、身内では一番この人に多くの思い出を戴いている。



映画や遊園地、アイススケート、思い出せないぐらい・・・
多分、姉は友達が少なかったのだろうか、
事あるごとに私を連れてどこかに出かけてくれた。
今でもたまに夢に見る風景は、
その下の姉と出かけた所、


今ではそれがどこかも解らない、
その下の姉なのだが、
何かの病気のように喋り続ける。
止まらない、
大阪ではクルクルパーと言うのだが、


多分、私と言う人間を形成する上で、
かなりのパーセンテージが、
その姉で出来ている事は、
悔しいが認めざる得ない、


しかし幼き日、
私を自転車に乗せたまま、
放置、その自転車が何かの拍子で、
転倒、その時、私は強く頭を打った。


それも今の私を作った一因だと思う、
私もクルクルパーになってしまった。
その下の姉夫妻だが、
よく喧嘩をする。


私の娘が結婚式で、
私と家内がよく喧嘩をして、
家族が嫌になった事があったと言ったが、
私と家内の喧嘩等、


野球で言えば、
3A・・・
姉夫婦はメジャーリーガーのしかも、
オールスター夢の球宴が毎日だ。


その姉夫婦を式に呼ぶのかと、
娘が連絡して来たが、
私はどうしたものかと、
答えた。


暫くしてその姉夫婦の長男、
私の甥なのだが、
連絡があった。


姉が式を楽しみにしていると、
では気が進まないが呼んであげれば、
と、娘に連絡、


結婚式当日、
披露宴、余興は無く、
終盤に私、新婦の父が弾き語りで歌を歌う、
まあ、大胆な話なのだが・・・


アメイジンググレイス
中島みゆきさんの「糸」
そして最後に、


玉置浩二さんの
「MR.LONELY」
その歌の前奏を伸ばし、
少し私が喋った。


私は娘達と遊んで来ただけだと、
お前達を育ててくれたのは、
私では無いと・・・
お前のお母さんだと言おうと思った時、

ん?し、しまった・・・
色んな昔の思い出が一瞬で、
体中をF1レースのような勢いで走り回った。


ぐ、ぐ、ぐっ・・・
何十回も色んな披露宴で歌って来たが、
こんな経験は初めてだ。
マ、マジで、こ、声が出ない・・・


え、どうしょう・・・
突然、な、涙が出だした・・・
と、止まらない・・・
忘れていたがこれが漢字四文字で、
絶体絶命と言うのか・・・
情けないが、しかしこれが父親なのか・・・


その時幼き日から、
よく聞いた声が会場中に響いた。



「ちゃんと喋れや!」


そう、あの時も、あの時も聞いた事がある。
幻の魚、50cm程の、
磯の王者石鯛を安物の貸し竿で釣り上げた豪傑、


私が愛する山岡鉄舟先生より、宮沢賢治より、
ましてや坂本龍馬よりも、
マッサンこと竹鶴政孝
それはただの歴史上の人物だ。
別に何をしてもらった事も無い、
私に多くの物を、経験も与えてくれた。
私の姉の声だった・・・


会場に響き渡る轟音その大声で、
娘がまだ産まれ前の、私が結婚する前の、
遠い、遠い私の幼い日々に引きずり込まれた。



「ハッとなる」とはこういう事なのか、
完全にいやそれ以上に覚醒出来た。
復活!
何事も無かったように話し、
無事歌いきる事が出来た。


私も姉とよく喧嘩をするが、
最後の、最後に助けてくれるのは、
やはり血の繋がりなのでは無いだろうか、
娘の挙式で改めて、
そういう事を思い直した。
娘よありがとう、


そして助かったぜ、
姉よありがとう!

こんな僕でもやれる事がある・・・


☆ウイスキーが一年中でもっとも美味しい季節が来ました。
毎晩暇な夜が続いています。
そろそろ飲みに来ませんか?