黄昏ウイスキー  TWILIGHT WHISKY

大阪は京セラドーム前の小さな本格的BAR「BARin」の日記 

酒通信 1975

値段、値段、
高い、安い・・・
疲れた・・・
この未曾有の不景気の中、
少しでも安く、もっと安く、
安くしたら人が来る。


それなら安売りスーパーと同じ、
もしかしたら、私達がウイスキーの付加価値を下げ、
いや、ウイスキーを冒涜しているのでは、
いくら安いとは言え、
その一本に理解が無く、
思い入れも無い者が扱えば、


銘酒と言えども地に落ちる。
今の私がここまで来るのに、
何百本と色んなお酒を飲んで来た。
それを肥やしに知識を蓄えた。


全ては授業料だ。
店にあるお酒は全てお金を出して買っているのだ。
もっと大事な事は、
値段ゲームに参加してはいけない、
地獄の釜に引きずり込まれる。


安売りをし、
値段を崩壊させてはいけない、
安いから来て戴くのではなく、
私だから来て戴くを貫こう、


酒は注ぎ手によって味が変わる。
震災直後、常連氏のBAGSさんが、
貴重なビンテージを一本寄付して戴いた。
半分程残っていたその逸品は、
「アードベック 1977」

それを3000円(45ml)で販売し、
全ての売り上げを義援金にした。
流石に飛ぶように売れた。
その心遣いに応えようと、


どうしても飲みたいと言われた一本があった。
どんどん値段が上がる。
もう、これぐらいで買わないと手が届かなくなる。


但し今回は私の言い値でお願いしますと言った。
「かまいませんよ、幾らでも、先に二杯分払いますよ」
なら、行きましょう、
すると何人か手をあげてくれた。


「マスター次のも頼みますよ」
と、若者が言った。
商売の本来の姿、


極端な話をするが、
安宅産業 会長 安宅英一
実業家としてはどうだったか、
私がどうこう言うものでも無い、
しかしコレクターとしては、
大阪市立東洋陶磁美術館と言う答えがある。


その氏の逸話にこういう話がある。
業者が沢山の皿や壷を持って来た。
しかし、その中には偽物も混ざっている。
しかし氏は全てを言い値で買い取ると、


どう見ても偽物と分かる物を買う氏に側近が尋ねた。
何故、偽物まで買うのか、
氏は答えた。

「お金を沢山持たせてあげんと、
次に良い物を持って来ないじゃないか」と・・・



安いから飲んで戴くのでは無く、
飲みたいから飲んで戴きたい、



究極のバランス、スペイサイドのような芳香、
「アードベック 1975」
申し訳ありませんが、
今回は予約完売致しました。


値段とは自信の裏付け、
安いとはそれ以外に何も無い事、


酒は注ぎ手によって味わいが変わる・・・