近年「永遠の0ゼロ」と言う、
小説が映画化され話題となった。
自分の祖父の戦争での足跡を尋ねる。
そういう内容だったような、
その日は兎に角寒い夜だった。
寒波が厳しく、
店もいつもの如く静かに「トム・ウェイツ」が流れていた。
そんな夜に学生時代の友人が尋ねて来た。
最近親父さんを亡くされた。
平成25年3月26日、
親父さんは高齢で、
私の父と同じく、
大正生まれ、
享年87歳だったと、
私の父は酒を飲むと饒舌で、
戦争時、満州に渡り食事係を担当し、
奮闘したこと等をよく話していた。
死に物狂いで、毎日、毎夜の食事を現地で調達する。
それ故に私の戦争のイメージは、
銃弾や爆弾、特攻、死というよりも、
食料を探し、ひたすら歩くひもじさの方が強い、
虫や死肉までも食べ、
必死で帰って来た。
何も無くなった荒野のような日本を目指し、
それを復興させ、
子を育て毎晩のように戦争の悪夢に奇声を上げ叫んでいた。
年末には同じ部隊の方々が数名尋ねて来て、
宴会が始まり、最後は皆で肩を組み、
「ここは御国の何百里・・・」と歌い始め、
「時計だけはコチコチと・・・」のところで、
皆が、意味意味不明な大声を出し、泣き崩れていた。
生き残った者達の苦しみなのだろう、
そんな私の父とは逆に、
友人の父は何も語らなかったと言う、
友人は親父さんが戦争時「回天」
人間魚雷に携わっていたと聞いていたと、
しかし、お亡くなりになってから、
厚生労働省に申請を出し、
軍歴証明書を取り寄せた。
それを私に見せてくれた。
そこに書かれていたのは、
違う事実だった。
友人は、そこで父が何をしていたのか、
どんな役目をしていたかを知りたいと、
いや、私とてこの部隊の事は詳しくは知らない、
調べて欲しいと言う友人に、
ビール3杯の報酬を要求した。
友人は快く了解した。
が、その日から私の地獄の検索が始まった。
寡黙な友人の父が語らなかった物語、
私がこじ開ける事になった。
「寡黙なる龍」
その龍の名は「蛟」(みずち)と読み、
「蛟龍」(こうりゅう)と言う名の、
潜水艦、特殊潜航艇、
友人の父が所属していた部隊は、
「小豆島突撃隊」と言う、
海中の特攻隊だった・・・