黄昏ウイスキー  TWILIGHT WHISKY

大阪は京セラドーム前の小さな本格的BAR「BARin」の日記 

17歳の青年が・・・

あれは1989年、
全仏オープン4回戦、
そのコートに立つのは、
「イワン・レンドル」
ランキング1位の紛れも無い当時の
チャンピオン、
その王者にアジア系の幼顔の青年が立ちはだかる。
前半1セット、2セットはレンドルがあっさり連取、
しかしその後、壮絶な戦いを観る事になる。


その小柄な青年はレンドルとは対照的な、
泥臭くかつ必死、
どんなボールも取る、拾う、返す、
諦めない、どこまでも諦めない、
日本のスポ根アニメを観ているような、
何だこの子は?
誰もがレンドルの勝利を疑わなかった会場の空気が変わり始めた。
いや、あれだけ諦めない姿勢を見せられては、
おのずと拍手を送るだろう、


長時間に渡る試合、
世界一の選手と4セット戦った事で、
足は痙攣し、限界を遥かに通り過ぎていたのだろう、
サーブも打てなくなっていたのか、
執念で打ったサーブは、
まさかのアンダーサーブ、
テニス初心者が使う、
下打ちのサーブ、
不意を付かれたレンドルがミス、
笑い、拍手、大歓声が上がり、
会場は騒然となった。


しかし幾らなんでももう無理だろう、
誰もがそう思った。
一人を除いては、
そう青年は諦めてはいなかったのだ。
それでも・・・


そうなるとレンドルは、
自分のペースを保つことが出きず焦りだした。
第5セットだった。
レンドルはマッチポイントを失った時に、
審判と群衆をののしり始めた。
振り回されるレンドル、
そしてついに、奇跡が起こる。
青年にファイナルポイントが来のだ。


ファーストサービスを打つレンドル、
フォルト!
するとボロボロの体の青年がするすると前に出た。
コートの中央の方へ、Tラインの手前、
何をするのだ?
誰もがそう思った。
勿論レンドルも、
下がれと言うようなジェスチャーをするレンドル、
下がらない青年、
レンドルが主審にクレームを、
それでも下がらない青年、
打たないレンドル、
しかし来い!と構える青年、


仕方なく打つレンドル、
ボールがネットに弾かれる
外れた・・・


ダブルフォルト
その場で泣き崩れた青年、
セットカウント4-6、4-6、6-3、6-3、6-3、
4時間37分の激戦を征し、
青年は決勝に進出、
またもや粘り強く戦い、
エドバーグを倒し、
この年の全仏オープンを征した。


アジア顔の小柄な青年が、
世界中に諦めないと言う事の、
偉大さ、素晴らしさを知らしめた。
まだ誰にも破られていない、
四大大会(男子)
最年少優勝記録


17歳と3ヶ月の
試合後「もっとここに居たかっただけ・・・」と語った。
若き日の「マイケル・チャン」選手だった。


私はこの試合でリアル「矢吹ジョー」を観た。
いや、今なら「幕之内一歩」だろう・・・

負けるとは諦める事・・・
頑張れ!錦織!