話し出すまでに男は、
二杯のウイスキーを飲んだ。
初夏の爽やかな風が一陣、
BARの小窓から吹き込んだ時、
「聞いてくれますか」と、
話しかけて来た。
二人っきりの店内、
聞かないわけにはいかないだろう、
「私で良ければ」
仕事か恋愛か、
まあ、恋愛だろう、
疲れ方がそんな感じだ。
彼女と長く暮らしていると、
たまに自分が必要とされているのか、
解らなくなると、
それで先日一人で飲みに行き遅くなり、
家に帰りにくくなり、
マンションの下に居ますと、
メールを入れたようだ。
男は小さな賭けをしたのだと、
彼女が迎えに来るか来ないか、
結果、彼女は来なく、
男は公園のベンチで寝たらしい、
毎日、毎日、当たり前の事が続くと、
ふと、このままでいいのかと、
疑問になる事が確かにあるが、
何事も無くこのままなのが、
一番良いことなのでは、
と、答えて付け加えた。
まだまだ夜は寒い、
公園で泥酔で眠ると、
死にますよと・・・
そして今も彼女は待っているのではと、
男はお代わりをしようとしたが、
グラスを置いて、
初夏の風の中に消えて行った。
「このままが」by SION