誰も解らず、誰も共感せぬ事を書こう、
お客さんとの会話でも頻繁に出る。
「半沢直樹」
確かに凄い視聴率だったのだが、
私怨とも思われる復讐劇、
最終回を観た時に、
一遍の童話が頭に浮かんだ。
意味不明な一行で終わる。
宮沢賢治作「オツベルと象」
白い小象の不当な扱いに対する。
これも復讐劇なのだが、
オツペルと言う主人に良いように使われ、
疲れ果てた小象が、
仲間に応援を頼むのだが、
筆も紙も無いと言うと、
何処からとも無く、
「ほらこれでしょ」と、
目の前に赤い服着た可愛い童が微笑んでた。
まるで半沢直樹の妻「花」のように・・・
手紙を受け取った象の群れが押しかけて来て、
オツペルを襲う、
オツペルも銃で応戦、
この時の擬音語がかなり不気味なのだが、
グララアガア、ドーン、
グララアガア、ドーン、
グララアガア・・・
そしてオツペルは象の群れに踏み潰される。
この辺りから、宮沢賢治の異次元の扉が開く、
少し長いがこういう終わり方をする。
「牢ろうはどこだ。」みんなは小屋に押し寄せる。
丸太なんぞは、
マッチのようにへし折られ、
あの白象は大へん瘠やせて小屋を出た。
「まあ、よかったねやせたねえ。」
みんなはしずかにそばにより、
鎖と銅をはずしてやった。
「ああ、ありがとう。ほんとにぼくは助かったよ。」
白象はさびしくわらってそう云った。
白象は淋しく笑うと言うのだが、
何故、淋しく笑うのか、
土下座をさせる半沢直樹、
あれは本当に気持ちが良いものなのだろうか、
オツペルは踏み殺されたが、
それで白象は気持ちが晴れたのだろうか、
元々白象は勝手にやって来たのだ、
自分の意思で、捕らえられたのでも、
強制的に連れて来られたのでも無い、
そして最後の難解な意味不明の一文に続く、
おや〔一字不明〕、川へはいっちゃいけないったら。
一字が消えている。
そして唐突に「川へはいったらいけないったら」で終わる。
50歳と言う年月を前に、
初めてこの文の意味が解ったような気がする。
それもまさかの半沢直樹の最終回で、
一字不明の一字は「君」だと思う、
「君」は「あなた」私達読者の事だ。
「銀河鉄道の夜」の中で「カムパネルラ」は友人を助けようと、
川に入り亡くなる。
正確には「おや君、むやみに川へはいっちゃいけないったら」
なのだろうか、
川に入れば夏なら気持ち良いだろう、
川に入れば水も飲め渇きも癒すだろう、
川に入れば魚も獲れ食べれば美味しいだろう、
さりとて友人を助けようと川に入れば、
深みにはまり、
溺れて死ぬと言う事もあるのだ。
白象は働いた。言われるままに働いた。
が、一生懸命努力したから、
と言っても必ず、良い結果には繋がらない空しさ、
復讐したからと言っても、
そこには何も無い、
と言う虚しさ、
そうだこの仕事を選んだのは私だ。
誰かに強制的にさせられたのでは無い、
なら、誰も恨むな、
と言う事なのか・・・
サラリーマンなら昇進もあれば、
当然左遷もあると言う事なのか・・・
それなりの覚悟を持てと言う事なのか、
しかし生きていく為には川と言う、
人生という流れに入らなければいけない、
結果を恐れるなら、川に入るなと言う事か・・・
この物語の中で、
白象は一言言うたびに「サンタマリア」と最後に付けるが、
これは聖母アリアのイタリア語、
「カンパネラ」もイタリア人名、
多分「死」の暗示だと思う、
この日から池井戸潤氏の後ろに、
宮沢賢治の影が見える。
ならば「銀翼のイカロス」は、
「よだかの星」なのか・・・
そんな訳は無いかサンタマリア・・・・
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