黄昏ウイスキー  TWILIGHT WHISKY

大阪は京セラドーム前の小さな本格的BAR「BARin」の日記 

蝉と風と・・・

暑い夏の最中、
夕暮れ時も、まだまだ暑い日々、
買い物を済ませ、一路店へ急ぐ道すがら、
歩道に何かが動いた。


すぐ横を通り過ぎると、
小さな虫が道に迷うように、
向かうその先には、
車道が・・・


行き過ぎようと思ったが、
振り返り、少し考え、
戻ることにした。


確かあの虫は、
自転車を止め、
しゃがんで見ると、
やはり、蝉の幼虫、


交差点の大きな街路樹を背にして、
横断歩道に向かっている。
しかし、子供の時には、
戸惑いも無く触れた虫、
大人になると何故かためらってしまう、


しかし、このままでは、
ひき逃げ事故が発生する事は、必然・・・


手を差し伸べてみた。
すると蝉の幼虫は何のためらいも、
驚きもせず、力強く私の指に乗って来た。


人間が勝手に忌み嫌うだけで、
彼らの方は友好的なのだ。


「すいません、道に迷ったようで、
確かこの辺に大きな木があったのですが、
出来たら、連れて行ってくれませんか」


目の前の大きな木を見上げた。
そこまで行くのに、
私なら一歩か、二歩、
しかし、この子ならどれだけ時間が掛かる事か、


木の下に放そうとしたが、
名残惜しいのか、
なかなか離れてくれない、


暫くし、気が付いたのか、
ぐんぐんと、木を登り始めた。
ある程度登るまで、
ずっと見ていた。


子供の時に、
母によく言われた。
蝉を捕ってはいけないと、


蝉は長い間、土の中に居て、
やっとのおもいで出て来ても、
寿命は短い、
だから、捕ってはいけない、殺してはいけないと、


君も短いの命だろうが、
いや、そう思うのは人間だからかもしれないが・・・
折角生まれて来たんだ。
その命の火が燃え尽きるまで、
夏の声を響かせろ、


街路樹を離れる時、視線を感じた。
信号待ちをしていた女性が、一部始終を見ていたのか、
気味悪そうな顔で私を見ていた。
仕方ない、それが人間だ・・・・


子供の時の夏休みと、
母の教えを思い出した。
夏の夕暮れ、一筋の風が流れた僅かな時間・・・

「蝉もわたしも時がながれてゆく風」
           種田山頭火


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