又、金曜日が来た・・・
何故か暇な金曜日、
ポツリ、ポツリと、それでも来てくれる人達、
まあ、マイペースで、
そんな時、白髪に白ひげの紳士が一人、
音も立てず入って来た。
目線が・・・
ただならぬ雰囲気を放っている。
で、出来る。
久し振りに緊張が走る。
間を空けよう、
おしぼりをお渡しし、
少し様子を、
「何をお出ししましようか?」
「ハイボールは何を?」
そう来たか、
んん・・・
「基本は角ですが、これもありますよ」
「それですか・・・ではそれで」
少し期待外れだったようだ。
何も喋らない白ひげの紳士、
妙な間なのだが、
剣道と全く同じ、
間の取り合い、
多分、少し待てば斬り込んで来るだろう、
左耳に、神経を走らせながら、
その間、暫し常連氏と会話を、
暫くして「これは何ですか?」と、
聞き取りにくいぐらいの小さな声で、
「それは、大葉を使う、モヒートの変形ですが、
モヒートではありません」
「では、それを」
一口、二口・・・
「懐かしい・・・」と、
ポツリと、
「懐かしい味が、カクテルで懐かしさを感じたのは、
初めてです」と、少し微笑まれた。
やはり、出来る。
味わいのある表現、
これは相当本も読んでいるようだ。
さあ、何を読んでいるのか、
「私、旅行が好きで若い時、何度も海外に、
そこで客船のBARが忘れられず」
「あの船で船医をされて・・・」
「北 杜夫」さんですね、
「ご存知ですか」
「勿論、ドクトルマンボー航海記ですよね」
その時、居合わせていた地元の常連氏の女性、
チラッと見ると、
大きなあくびをしていた。
「先日、カクテルコンテストを見て来まして」
「ああ、26年ぶりですね」
「流石に良くご存知で、もう次は見れそうに無いので」
「このカクテルも良いですね、実に面白い」
先日の方とは大違い、実に紳士的だ。
乙女達よ、こういう大人も居るのだ。
大人に失望しないでくれ、
して、こういう方が多々来られないのは、
全て私の力量不足なのだ。
「では、ブラックボトルを」
ん?
ここで、まさかの「ブラックボトル」
あれか、あれなのか・・・
「いや、白洲次郎に敬意を表して、いつもBARでは、
頼むんですよ」
で、出た・・・
面白いぐらいに出た・・・
「白洲次郎」
「でも、昔のとは味が違うんですよね・・・」
「ポートエレン」の事か・・・
実は私はその当時の「ブラックボトル」を私は知っている。
あまり言うのも失礼かと、
飲み込んだ。
「私はオールド・プルトニーも好きでして」
「これですね」
「あるんですか」
「プルトニーの街は宝島、ジギル博士とハイド氏等で、
有名なステーブンソンの父親と関係が深いんです」
「マスターはどうしてそうご存知なんですか?」
と、言うのでいつも読んでいるモルトの本を、
数冊お見せした。
「ほー、やはり飲み手は、飲み手ですね」
と、そこで当店常連氏の地元の女性を見た。
魂が飛び出しそうな、
大きくあくびをしていた・・・
夜は長い、
会話はつづく・・・
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