早い時間に、時折来られる老紳士が居る。
いつも、あまりに早いので、
当店の常連氏も、その方の存在を殆ど知らない、
そして、オーダーは
「ジンフィズをビーフィーターで」と、
必ず、それを二杯、
さっと飲んで、さっと帰られる。
若い時、かなりＢＡＲに通われていたそうだ。
又、ミナミのお店をよくご存知で、
最近知ったのだが、有名大学のご出身、
パソコンも御自分で組み立てると、
その老紳士が数日前、
「もうあれは無いんだね」
と、言われた。
その時、懐かしいウィスキーの名前を、
そのウィスキーは１９７０年〜８０年によく出回っていたが、
今は終売で、あまり見かけ無くなった。
私も若い時、何度か見たが、
妙に高そうで、頼んだ事が無かったように思う、
確かに高級なお酒だ。
自分で店を出してからも扱った事が無かったと思う、
老紳士は淋しそうな顔をして、
バックバーを眺めていた。
その方は、いつもは安い居酒屋さん等に、
通われているのだが、
月に、一度か二度、私の店に来てくれる。
もう、何年になるだろうか、
そういう方が、お店を支えてくれているのでは無いのか、
そして、新しいお酒にばかり目が行き、
古いお酒の事を忘れていた。
先人敬う、そう、そういう事を忘れていたのでは、
探した・・・
老紳士に飲んで戴きたくて、
古き良き時代のウィスキー
その名は「大使」
「アンバサダー２５年」
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