あいつが死んだ。関空沖の悲劇から、もう何年だ。
この日が近づくと、ネガティブになる。
毎年なのだが、車を走らせ、
この海に来る。
あの日、大阪は珍しく大吹雪、
よく辿り着けたものだ。
あいつの船は、この海で、どてっ腹を向けて、揺れていた。
中にいる事を願い、時間だけが過ぎた。
悲しい思い出だ。
あいつと良く飲んだ酒がある。
日本酒「剣菱」
私が日本酒を飲まない理由がそこにある。
思い出すからだ。
失礼な話だが、墓に行った事が無い、
墓の下で眠っているなど、
想像もしたく無いからだ。
あいつは海に居る。
だから、海が見える家を買った。
約束があった。
年を取っても、波乗りをしょうと、
守っている。
いつか、自分の船を持とうと、
守っている。
ギターも続けている。
バイクの大型免許も果たした。
何もかも、守っている。
私は守っている。
そして今でも待っている。
人は笑うだろうが、
あいつが海から帰って来るのを・・・
友よ、飲んでくれ!