黄昏ウイスキー  TWILIGHT WHISKY

大阪は京セラドーム前の小さな本格的BAR「BARin」の日記 

ある人に、大変失礼な事をした。

その方が、私の母のファンだと、

そこで、少し長いが、以前書いた「おかん通信」

第二弾を、お詫びがてらにどうぞ!


「おかん通信」待望の第二弾!

解禁なのだ。

前回の「おかん通信」

から第二弾を熱望する声が

あまりにも多い、、、

私的には年末頃にと、

思っていたのだが

最近調べ事が多く、

多少疲れた事もあり

封印を解く事にした。


年配の方ならご存知かと思いますが、

富田林に、

今は塔だけが残っているが

以前は「PLランド」なる遊園地があり、

なかなかの盛況ぶりだった。


あまりに小さかったので、

全貌は覚えていないが、

ある場所だけが、

今も鮮明に脳裏に焼きついている。


それは、、、、

プールだ、、、

色や形までもがくっきりと浮かぶ、、、

その直後100mを超えるかのような、

津波のような恐怖が、

襲い掛かるのだ


こ、恐い、、、


その場所で、

今なら幼児虐待とも取れるような事件が

展開される事となる。

あれは少し肌寒かったので、

夏が過ぎようとしていた頃だ。

多分6歳だろう、

その前の日に「ウルトラセブン

を観た記憶がある。


「流れるプール」

今なら当たり前にある。

この「流れるプール」なのだが、

当時は珍しかった。

おとんと上の毒舌の姉が、

見事にはしゃいでいた。

私は寒かったのだ。

寒くてプールサイドで震えていた。


隣でおかんも巨体を震わしていた。

暫くするとおかんが、

ブツブツ言い出した。

こんな時は必ず何かが起きる。

私は小さい時に、

何故かこういう第六感めいたものが、

よく働いたのだ。


「しゃないな〜」

な、何が?

出た!おかんの勘違いだ!

私が「流れるプール」に入りたがってると、

思ったのだ。


説明するが当時の

「流れるプール」は

現在の物よりも安全性に考慮が無い、

恐ろしい勢いで回っているのだ。

洗濯機の中のように、、、


ゴリラが子供を抱えるように、

おかんが私を、

抱き後ろ向きに、

ゆっくり、ゆっくりと、

巨体をプールに沈めた

おかんの胸ぐらいまで入った時

私は地獄を見た、、、


瞬間何が起こったのかも、

解らなかった。

おかんがバレリーナのように、

クルクルと回転しだした。

そしてロータリーエンジンのように、

ドンドンと、

その回転は加速し始めた。

凄いスピードに達した瞬間

私は見てはいけないものを、

見てしまったのだ、、、

おかんの口に大量のカルキを含んだ水が、

流れ込んでいるのを、、、


お、溺れている。

おかんは確実に溺れている、、、

目を見た、、、

白い、、、

白目を剥いてやがる。


な、なんてこった、

離せ、離してくれ、

が逆に溺れる者、

子供でも掴むなのだ。

完全に立場が逆転している。

一緒に死にたくないのだ。

頼むから一人で死んでくれ!


懸命にもがくのだが、

おかんは完全に私を、

浮き輪代わりにしている。

さ、最低だ、、、

このままじゃやばい、

私の口からもカルキを含んだ。

大量の水が入りだした。

し、死ぬ、、、

その時私は渾身の力を込めて叫んだ!

「お、おかん!!!」


渇!

おかんの目が開いた!

が、完全に血走っている。

死という瞬間が近い証拠だ。


おかんの両目は、

その当時に流行った学生運動の、

血気盛んな若者のようになっている。

血走り、虚ろだ、、、


だ、だめだ、、、

6歳の子供が、

絶望、

という二文字を知った瞬間だった。

この間で約15m程は流されていた。


しかしおかんは踏ん張った。

懸命にプールサイドに向かい、

バタバタしている。

ち、近づいた。

瞬間弾き飛ばされた。

何故ならジェトの水流は、

プールサイドの壁から発射されているのだ。

おかんは、

原理が解っていなかった。


説明していなかったが、

おかんは1mも泳げないのだ。

完全なる暴挙なのだ。

が懸命に再度挑戦した。

この時点で私の意識は、

私の肉体から離れかけていた。


結果は同じだ。

弾き飛ばされるおかん、、、

瞬間おかんが信じれない言葉を叫んだ!

「まさお頑張れ!」

お前が頑張れ!誰のせいやねん!


ああ〜このまま、

プールの藻屑と消えるのか、、、

瞬間!で、出た!他力本願パワー炸裂!

おかんが大きく片手を挙げ叫んだ!

「助けておくんなはれ〜、ゴブ、ガブ」

「助けておくんなはれ〜、ゲブ、ゴブ」


そこら辺にいる。

見ず知らずの人に

当たりかまわず

救助を依頼したのだ。

は、恥ずかしい、

が、初めからそうしろ!


中年の男性が異変に、

気付き駆け寄って来た。

私を抱き上げプールサイドに,

私は無事生還した。

がおかんの巨体を見たその男性は、

「あんさんあそこに梯子あるから、

それ登りなはれ!」

おかんの救助を拒絶したのだ。


プールサイドから私は見た。

おかんが木の葉のように

くるくると回りながら、

流されて行くのを、、、

「おかんー!」


私は流れるおかんを追いかけた。

精霊流し状態のおかん、

私にはどうする事も出来ない、

(が、頑張れ、おかん)

ゆっくりと回りながら

プールサイドに向かい、

流れている。

その先に梯子が、

て、手が伸びた。

つ、掴んだ梯子を掴んだ。

が、水流が、、、


おかんが鯉のぼりになった。

体が完全に横を向いている。

ガブガブと、

美味しそうに水を飲んでいる。

完全に生死の境を彷徨っている。

凄い力を入れているのが解る。

鉄の梯子が曲がりそうだ。

やっとの思いで、

両手で梯子を掴んだ。

まわしを掴んだ。

お相撲さんのようになり

足が掛かった一段一段登り始めた。


の、登り切った。

直後四つん這いになり

口からダラダラと、

水を垂らしていた。

おかんがベトナム戦争で傷ついた。

アメリカの兵士のように見えた、、、


ぜいぜい言うおかん、

だ、大丈夫か?

私は傍でおかんを、

見守っていた。

小さな声でおかんが喋った。

「し、死んでまうわ、、、」


それは私のセリフなのだ、、、

そしておかんの怒りは

PLランド」の経営者に向けられた

「こんなもん作りあがって!」

入るあなたが悪いのだ。


その時おとんは、

快調に流れるプールを、

あめんぼのように泳ぎ回っていた。

妻と子が死に掛けているのも知らずに、、、

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