黄昏ウイスキー  TWILIGHT WHISKY

大阪は京セラドーム前の小さな本格的BAR「BARin」の日記 

おかん通信 古都 奈良 再び、、、

★を付けたお陰で多くの方が、

尋ねられるようになった。

コメント欄も一杯だ。

そこで、私の過去の記事で、

当店のお客様から反響の大きかった記事を再び、

私の母、昭和2年生まれ「幸子」のお話

昨年の10月に書いた「おかん通信」だ。

では、、、



今年も夏が去って行く、、、

時が走り続けている。

子供の時の,

あの夏の海や山は,

どこに行ってしまったんだろうか?

断片的に,セピア色で,

少しカラーで,

色んな情景が浮かぶ

長い時間だった事には,

間違いないのだが

振り返ればひと時に思えるのは

すこぶる寂しい


色々な思い出の場所を,

頭の中で旅をする。

ボーッとしながら,

夏の疲れが噴き出しているようだ。

TVを見るとも見ないとも,

どちらとも取れるような

体勢のままでパソコンの前に居た。

NHKの放送で何やらドラマが始まった

「万葉ラブストーリー」というドラマだった。

万葉集」の句と,

人の生き死にや,

恋愛をテーマにした数編の短編ストーリーだ。

これがなかなか良かった。

万葉集というだけで

舞台は古都奈良だ.

頭の中がまだ時空旅行している。

TVの中に奈良の鹿さんが映った。

すると頭の中の,

スライドショウーの中から

一枚の画像がヒットした。


私は鹿さんが異常に恐ろしいのだ。

あれは4歳だっろうか,

5歳だったろうか?

貧乏家族が,

出来るだけのおめかしをし,

世間を欺き,

中流家庭を装い,

奈良公園に出掛けた。

春か秋の休日だった。

公園で弁当のような物を,

食べようとした時

それは起こったのだ。


数頭の角の立派な鹿さんたちが,

集まりだした。

すると急に,

一頭の鹿さんがその立派な角で

私の体を突いてきたのだ。

角が服のどこかに引っかかり,子供の私は

持ち上げられそうになった。

実際腹の辺りが非常に痛かった。

鹿さんが少し下がり,

二度目の攻撃に入ろうとした。

次の瞬間,

おかんが大きく前に立ちはだかったかと思うと

いきなり鹿さんの角を,

左右両手で掴んだ。


ゴングが鳴った!


鹿さんは頭を下げ,

大きく力を入れようとしている。

踏ん張るおかん。

鹿さんは小刻みに角を振っている。

おかんはアキレス腱を、

伸ばす体操のような格好になった。

おかんのパワーメーターの針が、

マックスを指しかけているのだ。


おかんはスカートを穿いていたが、

大股を広げる余りに

下着のシミーズは丸見えだった。

が、おかんは鹿さんの角を決して離さなかった。

鹿さんがキレた。

より低い体勢から、

おかんを押し出した。

おかんのヒールのかかとから砂煙が上がった。

ぐいぐいと少し曲がりながら、

後ろに下がるおかん

完全にタイマン状態だ。

おかんのふくらはぎの筋肉は、

ギリシャ彫刻のようになっている。


頑張れ!おかん!私は心の中で叫んだ。


瞬間おかんが体を交わした。ひるんだ鹿さん

そして惨劇が始まった。

おかんは、持っていた大きなハンドバックで、

国の特別天然記念物である、

奈良公園

鹿さんの顔面を、

殴り回したのだ。

右、左、右、左


完全に戦意を失っている鹿さんだが、もう、

容赦などという言葉は、おかんには無い

渾身の力で振り下ろされる凶器のハンドバック、

この恐ろしい惨劇が、

最悪さを増していくことになる。

おかんのハンドバックの持ち手が一つ切れた

途端におかんは、

スーパーサイヤ人を越えた。

当事ハンドバックをおかんは、

一つか二つしか持ってなかった。

その大事なバックを壊した犯人が、

目の前にいるのだ。


理不尽だ、、、、


だが鹿さんに、

大きく蹴りを入れたのだ。

がクリーンヒットではなかった。

これが鹿さんの不幸だ。

当たらなかったのが、

余計に腹をたたせたのだ。

完全におかんは、

地上最強の生物になった。

おかんはハンドバックを、

鷲掴みにして片手で、

鹿さんの角を持ち眉間目掛け、

バックの金具の部分で、

鉄槌を食らわせた。何度も何度も、

完全に鹿さんは、

群れのリーダーと認め、

従順な態度になっているにも関わらず、

おかんの怒りは、

遥か宇宙イスカンダル星まで達していた。


鹿さんは後ずさりした。

余程痛かったのか、

何度か頭をブルブル振って去っていった。

途中一度振り返った時、

思い出せないが、

何かおかんが意味の分からない事を叫んだ。

数頭の鹿さんが去る姿を、

仁王立ちするおかんの後ろから、

私とおとんで、

震えながら見ていた。

鹿さんが可哀想に見えた。

多分おかんは、

私を助けるというか、

私に買ったばかりの

上等な服を破られるという、

思いの方が強かったのではと、

今では確信している。

これはおかん(幸子)伝説の、

一つなのだがこのブログが続く限り

これはただの予兆に過ぎない、

という事を

覚えていて欲しいのだ。


そして正確には、

私は鹿さんが恐いのではなく、

鹿さんを見ると、

動物虐待という、

おぞましい光景が浮かぶのが恐いのだ。

だから大人のなってからは、

一度も奈良公園には行ったことがない、、、、


最後におかんの口癖は

「目には目を 歯には歯を」だ。