あいつが居なくなった次の日も、
その次の日も、又、次の日も、
海岸通りをうろつく私の姿があった。
探している。あいつを探していた。
見つかって欲しいし、見つからないで欲しい、
複雑な思いを胸に、、、
店は任せっぱなしになり、私の仕事は、
あいつ探しになった。
何日続けただろう、今の店を借りたばかり、
空家賃を払い続け、従業員の給料も払い続けた。
早く工事をしないといけない、とは思うのだが、
自然に足があいつを探しに行く、
何時間も毎日歩き回った。日が沈むまで、
３カ月ぐらい経ったある日、私は精神的にも、肉体的にも
限界が来た。一日休んだ。たった一日、その日、
携帯の電源を切り、一日中横になっていた。
トイレに起きた時、携帯を確認した。
留守電が、２０件以上入っていた。
ん？なんだこれは？
あいつの親父さん、弟、友人、
凄い数だ。
あいつが海底から上がってきたと、、、
親父さんの声は、何故か弾んでいた。
嬉しそうに、連絡を入れていた。
私も、（そうか、良かった、、、）と、呟いた、、、
初夏の良く晴れた日、日の光りが眩しかった。
小さな、あいつの娘が、あいつに宛てた手紙を読んだ。
澄み切ったはっきりした声だ。私の娘と同じぐらい、、、
バックに「藤井フミヤ」氏の「トゥルー・ラブ」が流れていて、
参列者の涙を誘った。
最後に棺おけを触りたくて、
駆け寄ろうとしたのだが、
足がすくんで前に出れなかった事を、未だに後悔している。
霊柩車は走り出した。
骨上げまでは付き合わなかった。
いや、見たくなかったのだ。
骨になったあいつを、、、
毎年この時期を、辛いものにし、
サーフィンに引きずり込み、ギターを教え、
矢沢を教え、死んでいったあいつ、
あいつは一体何だったのだろうか？
今の私の体の半分以上は、あいつで出来ているようなものだ。
サーフィンは人に教えるようになりました。
ギターはそこそこ弾けるようになりました。
矢沢のＤＶＤを買いました。
拝啓 親愛なる友へ
私は何も変わらず、今も生きています。
あなたとあなたの父に教わった通りに、
あなたもそれで良かったかもしれません。
今の世の中、人は人を裏切り、平気で嘘を付き、
約束など、夢幻、口では良いことを言っても、
行動は違う、あなたが嫌った人間が、そこらじゅうに
ウヨウヨと溢れ、純粋な生き方は、死を意味します。
仁義、礼儀、皆、糞のようなもの、
友情は金の繋がり、どうなってしまったのでしょうか？
それでも皆、人を見下し、己を高めようとはせず、
何も挑戦もせず、ヘラヘラ笑い生きています。
あなたと私が何度も死と直面したあの海に、
今の若者達を連れて行って、へらず口を封印させたいのですが、
そんな勇気の欠片さえ持つ者に、最近は出会っていません。
こんな現状を見ずに行ってしまった事は、
ある意味仕合わせかも知れません。
しかし私は誰にも理解されずとも、あなたは解ってくれると信じ、
今を生きています、、、待っていて下さい、
そのうち行きます。
あいつが良く歌っていた。
矢沢永吉氏「最後の約束」
http://www.youtube.com/watch?v=GjWOISp-LzM
そして矢沢永吉氏「親友」
http://www.youtube.com/watch?v=f6lL3W4q5bE&feature=related
最後に、私と私の親友の話にお付き合い頂いた事を、
心から、感謝いたします。
昨年、病院の広報誌でこの事を書きました。
何も関係の無い人に、聞いて頂きたかった。
ただ、それだけの理由でした。
今回は私のブログ故に、心行くまで書くことが出来ました。
それも、少しでも読んで頂いている方々がいるからだと思います。
それに対しては正直、感謝の気持ちで一杯です。
今、振り返るとあいつのようなライバルが居たからこそ、
やってこれたのかも知れません。
ギターや、サーフィン、いや、全てに於いて負けたくなかったのでしょう、
あいつが居ない今も、私は挑戦を続けています。
これからも続けていくでしょう、あいつに会った時に自慢してやろう
と、思っています。
人間、皆、限られた命であります。
私とて、後何年生きられるか解りません。
今一度、それを噛み締め、ただ、日が過ぎるのでは無く、
自分の生きた証としての、有意義な挑戦し、日々を大事に送って生きませんか、
死んでいった者達の為にも、、、、
私の店の扉を、あいつが開けるその日まで、
私は待っている、、、、
私が兄貴と慕う、桑名正博氏が私の店で何度も練習をされた曲です。
良かったら聞いて下さい
「我が、親愛なる友へ」Dear My Friend
http://www.youtube.com/watch?v=XqZnOy-h89Y
