映画「泥の河」のワンシーン、
天神祭りでお金を落とす、
信雄少年、それを慰めようとする。
廓船の少年、喜一、
あれは、いつだっただろうか、
八坂神社のお祭りだったか、
夜店だったのか、
その記憶は曖昧なのだが、
お祭りや夜店がある時に、
誘いに来る友達が居た。
その友達は兄弟が多く、
今思えば困難な生活をしていたのだろう、
二人で出掛けるのだが、
私の家も裕福とは言えない、
が、少しだけのお小遣いを貰た。
多くの人がぞろぞろと歩いていた。
確か、小学校の5年生ぐらいだったか、
同じ年の女の子が浴衣を着ていた。
別人のように見えた。
当たるはずも無いくじ引き屋さん、
案の定、外れ・・・
が、友達が、
「おしい!後一つやん!」
と、大きな声を出した。
いつも、いつもなのだが、
その友達は見ているだけだった。
「やれへんの?」
と、私が聞くと、
「いや、俺ええねん」
と、下を向いて答えた。
輪投げ屋さん、
投げ輪を5つほど貰えて、
並んでいる商品めがけて投げる。
「お、おしい!」
「入ってるやんけ!」
いちいち友達が横で叫ぶ、
やっている私よりも必死なのだ。
最後の輪が一つ、
私はその友達に、
「やる?」
と、投げ輪を突き出した。
「ええんか?ほんまにええんか?」
まあ、そんなにたいそうな事でも無いのだが、
「ええよ」と、言った。
友達は、ギリギリまで近づいて、
狙いを定めている。
その時間が、な、長い・・・
私はいつも適当に投げていたのに・・・
投げた!
入った!
が、おばさんが、入り方が悪いと言った。
「何でやねん!」
食い下がる友達、
「入ってるやんけ!」
大声で叫んだ。
私は恥ずかしくなり、
「もうええよ」
「あかん、あかん入ってるやんけ!」
そのまま友達を引っ張り、
店を離れた。
帰り道も友達はずっと、
「あれは入ってるは、絶対!」
と、ずっと愚痴っていた。
私は、なら自分でやれば良いのにと思った。
自分でやれば・・・
自分で・・・
出来ないのだ・・・
お金を持っていなかったのだ。
そんな簡単な事に気づくのに、
えらい年を取ってしまった。
彼は自分が出来ない分、
私がするのを、さも自分がやっているように、
投影していたのだ。
なのに私は適当にしていた。
この年になり、この時期になると何度も思い出し、
思い出しては申し訳ない気持ちになる。
そして裕福では無いと、
これだけしかくれないのかと、
小遣いに文句を言った。
その事にも申し訳ない、
少しでもお金を持たせてくれた事に、
感謝すべきなのだ。
私の娘達も、子を産み、
もう少ししたら解るのだろう、
それは、それは必死なのだ。
それでも少しでも何とかしようと、
思うのが親なのだ。
と、言う事を・・・
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