もう少し遡ろう、
高校3年生の私に、
私が通った高校は新設校だった。
それ故にまだ校歌なるものがなかった。
卒業式を控えたある日、
その校歌に変わる歌をアンケートで決める事になった。
今になっては定かでは無いが、
当時、私と良く気の合う、
友人が居た。
色んな歌が校歌の変わりに候補に上がった。
当時の流行歌や、懐かしの名曲だった。
しかし私は「仰げば尊し」を候補に上げた。
結果は2票だった。
私とその友人だけだった。
何故そんなに気が合ったのかも、
今となっては解らないのだが、
帰り際だった。
友人が言った。
その言葉は何故か鮮明に脳裏に残っている。
「なあ、誰も歌わなかっても、
俺達二人は歌おうや」
私は何気に、
「そやな」と、答えた。
そして、卒業式、
私は訳があり出席出来なかった。
「仰げば尊し」の事も、
すっかり忘れていた。
それから何年経っただろうか、
その親友の父から思わぬ事を聞いた。
卒業式の時、
私との約束を守り、
全校生徒が「松山千春」さんの歌を歌う中、
一人大声で「仰げば尊し」を歌ったと、
恥ずかしかったと、
お父さんに返す言葉が、
一言も出なかった。
涙を堪えるだけで精一杯だったのだ。
そんな事を一言も私には言わなかった私の友人、
2000年、2月、
関空沖の海難事故で、
海に帰った。
約束を守る。
それからの私の人生は、
あいつと語った夢の一つ一つを、現実に変えると言う、
日々を過ごして来た。
必死だった。死に物狂いだった。
しかし、それを誰にも悟られぬよう、
飄々と振舞って来た。
ただただ約束を守りたかった。
それだけだった・・・
そんな中、
NHK朝の連ドラ「マッサン」の中で、
「風間杜夫」氏演じる。
「森野熊虎」なる人物が、
皆が「蛍の光」を歌う中、
原曲である「オールド・ラング・サイン」を、
一人大声で歌うシーンを観た。
不覚にも、いや自然にだろう、
止め処なく涙が溢れ、
号泣してしまった事は言うまでも無い、
やはり思う、
悲しむ人が居るのなら、
死んではいけないと・・・
そして、今改めて思う、
やはりあいつは揺ぎ無き私の無二の親友だと・・・
私の知らない世界へ旅立ったあなたへ、
私に可愛い孫が出来た事を、
ご報告したい、
いざさらば・・・