何故か慌てた様子の男性が入って来た。
店内をキョロキョロしている。
「何にしますか?」
「ビ、ビールを」
何かそわそわしている。
そしてビールをガブガブ飲んだ。
「ブログを見てきたんですが」
「はあ」
「女性の人来ますよね」
「はあ?」
「ブログに書いてました。黒髪の」
一体いつの記事だ、
又、どう検索を掛けたらそれが出てくるのか、
「今日は来ますか?」
そんな事解る訳が無い、
「来ないと思いますよ」
「じゃあ誰か来ますか?」
だから、それが解れば苦労しない、
ビールを飲み干していたので、
「何か入れますか?」
と、言うと、
「じゃあ、水を」
何かブツブツ言いながら、
入口の方をしきりに見ている。
「おかしいな〜」
いや、おかしいのはあなただ、、、
「今日は遅いから誰も来ないと思いますよ」
「そうですか、では水を」
又、何かブツブツ言っている。
そして完全に首が曲がり、
エクソシストのような状態に、
その首がいきなり前を向き、
「すいません、水を」
それからも何杯も、
水を、水を、水を、
「もう、遅いから終わりませんか?」
「いや、まだ早いですよ」
何故、あなたが決めるのか、
仕方が無い、来ないと言うのを、
解って貰おう、
と、スマホを取り出し、
長期戦に備え、
麻雀ゲームをした。
会話も無く、
男はエクソシスト状態、
南三局に差し掛かった。
その時、
「すいません、最後に水を」
嶺上開花!ドラ7!
男は一杯のビールと水を7杯飲んで、
お金を払う時、
舌打ちをした。
私は何も悪い事はして無いのだが、
これがネットの弊害なのだ。
そしてそういう人達を相手に、
ネクタイを締めて、
沢山のウイスキーを揃えて、
カウンターに立っている私が、
道化師に思えて、
笑いが込み上げて来た。