黄昏ウイスキー 

大阪は京セラドーム前の大人の小さなBAR「BARin」の日記 

驚いた夜・・・ 2

いきなり若者が入って来て、
「教えて下さい!」と、言った。


若き日の「竹鶴政孝」氏が、
ロングモーン蒸留所の戸を叩いたように、
暇なので「いいよ」と、言ったが、
名前も知らない、


まあ、別にいいか・・・
「で、何が知りたいの?」
「美味しいカクテルの作り方です」
「・・・・」


漠然とし過ぎている・・・
いや、今まで何十人と教えて来た。
思い出せ、あれ、忘れてる・・・


では基本のミキシングとシェーカーを、
まずはミキシングから、
ん?
「それは誰かに教わったのか?」
「いえ、ネットの動画を繰り返し何度も観ました」


出来てる・・・
あどけなく、ぎこちなさはあるが、
出来てる・・・


後はスピードの問題だけだ。
何となく今まで教えた子とは違う異臭がしたが、
驚いた。
後は主軸の問題だ。体のバランス、
右の肩が落ちている。


肩の線を平行に保たなければ、
見る側に違和感が出る。


もう一度やってみて、
「はい!」
あ、出来た・・・


あれあれ、ではシェーカーを、
「マスターと同じのバロンシェーカーを買いました」
「はあ・・・」


では、バロンの基本の平行移動、
二段振りを、
「はい!」


「あれ?それは誰かに習ったのか?」

「はい!上田さんの動画を何度も観ました」
「上田和男さん?」
「はい!」


出来てる・・・
後は時間の問題だろう、
やればやるほど上手くなるはず、


この子は日本有数のトップバーテンダーの動画を、
ネットで目を皿のようにして何度も、
何度も観てきたようだ。


私ごときが出る幕は無い、
驚いた。いや驚いた。


環境が変わり過ぎている。
今の世の中では弟子に付くと言うのは時代遅れかも知れない、
が、やはり何点か動画だけでは解らない事がある。
それだけを指摘したが、
後は自分で切磋琢磨すればいい、


カクテルに関しても、他のお酒に関しても、
全てネットと本で調べ尽くしている。
私の質問にもほぼ答えた。


これなのだ。
何年も勤めても覚えない子は覚えない、
たった一日だけ来た子が、
もう既に数年掛かって得る知識を持っている。
要はやる気、覚えたいと言う気持ちの問題なのだ。
それを情熱と言う、


好きこそものの上手・・・


まあ、驚いた夜だった。
この町にこんな子が一人でも増える事を切に願う・・・
時代は変わっている・・・
こんな若い子が味の違いが解るのに、
おじさん、おばさんは何故解らないんだろう・・・