黄昏ウイスキー  TWILIGHT WHISKY

大阪は京セラドーム前の小さな本格的BAR「BARin」の日記 

酒通信 バーテンダーとの会話

ブログを止めようかと思い続けて書いている。
やはり、アナログの世界にデジタルを持ち込むのは、
如何なものかと、
ブログを書いていると、
やはりデジタル化された方も沢山来るようになった。


食べログ等の店の画像と、
お酒の値段、判断基準はそこしかない、
が、逆に拙い文章でも書けば、
私と言う人間も少しは解って戴けるかとも思う、
しかしBARでのマナーはネットでも、
最低限の事しか書かれていない、


BARでは粋に、
では粋にするとは何なのだ?
と、なるだろう、
少しBARをご存知の方なら、
お解かりだろうが、
BARにはメニューの無い店も多い、


居酒屋と違ってベタベタ値段も張っていない、
当店のように一つ一つ値段の札が掛かっている店など、
日本にもそう無いだろう、
まあ、野暮な話だが、
毎月のようにBAR初心者がやって来るのだ。


指差し注文が一番怖い、
仕方なくの話なのだが、
今度はそれによってあれは高い、
これも高いの無粋の宴が毎晩続く、


店に行くのも辛くなる日々、


とあるBARに行った時の話をしよう、
私がまだ30代の頃だった。
大阪から少し離れた場所に、
入り口からただならぬオーラを出している一軒のBARがあった。


少しためらったが扉を開けた。
緩やかなサックスの音色、
重厚なカウンター、
バックバーには無数のお酒が、
しなやかな対応のバーテンダー
私より少し年上のような、


完全に大阪のノリでは無い、
雰囲気に呑まれかけた。
しかしここはセオリー通り、
「少し飲んできたので、ジントニックを、
あ、ボンベイサファイアがあれば
それでお願いしたいのですが」


いやいや全然飲んでいなかった。
完全に見栄を張っている。
ご飯を食べたばかりだ。
そして棚に目をやると、
当時ではまだ珍しかったシングルモルトが、
隣の少し年配の男性客も、
シングルモルトを飲んでいるようだ。


そこでカウンターに出ていた。
スタンダードな物を一杯、
ストレートでとお願いすると、
私より一回りぐらい年上の、
マスターが離れた所でグラスを拭きながら、
微笑んだような、
どういう意味かは解らなかった。


若造のくせになのか、ほおストレートで飲めるのかなのか、
後者である事を期待した。
隣の年配の男性が、
私の方を見て少しグラスを上げた。
会話は無かったが、
すかさず、私もグラスを上げた。
ん?そうかこの人と同じ物を飲んだのか、
それで・・・
しかもその方の服装がダンディー・・・


駄目だ完全に呑まれて居る。
空気が重い・・・
緊張が走る。
何かミスをしていないかと、
落ち着け、とタバコを出そうとすると、
バーテンダーの方がすかさず、
灰皿を、しかし私が持ったのは携帯だった・・・


そこで慌てて電源を切った。
キョロキョロしてはいけないとは思うが、
珍しいウイスキーが目に入る。

すると「観光ですか」とバーテンダーに声を掛けられた。
「ええ、まあ・・・」
いやいや、そんなに離れていない、
そして安そうな物を何杯か飲んだ時、
一本のウイスキーが目に入った。

あ、あれは・・・
そこには以前から飲みたかったシングルモルトが、
しかしあるからと言っても希少品
相当な額だろう、

隣の男性客とマスターが音楽の話で盛り上がっている。
別にマナー違反では無いのだが、
値段が知りたい、
いや最悪カードもある。


しかしどこにもカードの取り扱いシール等無い、
持ち合わせが少ない、
飲みたい・・・
駄目だ見つめてしまった。

すると、
「こちらに興味がありますか?」
と、バーテンダーの方が棚の方に、
「ええ、あれは確か・・」

「ええ、そうですよ」
とボトルを出してくれた。
出さなくてもいいよ〜、

しかし飲みたい・・・
「ちなみに・・・」

「○万円です」

「・・・・」
高い・・・思ってたよりも高い、
ぐるぐる回りながら、
暗い井戸の中に落ちて行った。


が、気を取りなおして、
「やはり銘酒と言われるだけありますね」
「はい、申し訳ありませんが」
「いや、見れただけでも良かったです。
それを飲む事を夢見て又来ます」


「是非、又起こし下さい」
マスターと年配の男性客も微笑んでいた。
しかしそれっきりその店には行っていなが、
しかし今ではもっと恐ろしい値段なっているのも事実、
いや、現存しているだろうか、
お酒は正に一期一会、


もしかあそこで私が大阪人丸出して、
「高いわー!」と叫んだら、
音楽の話を楽しんでいる隣の年配の男性客も、
マスターもそして私の世話をしてくれたチーフも、
静かに響くサックスの音色も、
重厚なカウンターも、
居並ぶ銘酒も全ての雰囲気をぶち壊しただろう、


お酒を楽しむのは周りに気を配る事も大事、
自分の事だけを考えるなら、
家で飲む事をお薦めしたい、