私が色んなお酒に挑戦するのは、
仕事なので当たり前だが、
その私に挑戦して来る人が後を絶たない、
いや急増して来た。
スマホ、ネットの弊害、
ありありと浮き彫りになって来た。
人はそれぞれ好みのお酒が違う、
ある人は「ラフロイグ」
ある人は「エドラダワー」
ある人は「あかし」
ある人は「ニッカ」
しかしそれを言われるがままに揃えていたら、
お客さんが座る所が無くなる程、
酒で埋まるだろう、
そこでプロなら、
そこから又厳選し、
仕入れを行う、
当然な話なのだ。
主はお客さんなのだが、
軸は私なのだ。
こういう事をいつも聞かれる。
「マスターの一番好きな物は何ですか?
それを薦めて下さい」
「・・・・・」
この愚問にはいつも閉口する。
厳選に、厳選を重ね入手している。
私の店に置いているお酒は、
世界のお酒のほんの一握り、
言わば全てがお薦めである。
時代は既に変わっている。
一昔前は銘柄が数種類程しかなかった。
ましてやスナック等では、
今でも数種類しかない、
しかしBARでは今や次々と、
新しいアイテムが増えている。
選択肢が多過ぎる。
こういう質問をされる方は、
この時代の急速な変化に対応出来ていないのだろう、
誰もが認める。
そんな良い物があれば、それ一本で商売が出来る。
それと、値段の事もあるだろう、
しかも私は素人では無い、
そして例えば、
私がこれと、これですと言えば、
他のお酒は何の為に置いているのだ。
多分趣味の店だと思われているのだろう、
自分の好きな物をだけを集めていると、
人はそれぞれ好みが違う、
あなたに合う物を探す、
それが私達の仕事、
お酒は嗜好品と言う、
まずはそこから理解しなくては、
正にスマホ、ネットの弊害、
銘柄や値段だけを覚え、
全てのBARが同じものと思っている人が、
次々と来る。
無粋の極み・・・
日本だけでも無数の川がある。
ある川は氷のように冷たく流れが速い、
ある川は緩やかに流れ、水温も高い、
冷たい川では身も引き締まるだろう、
温かい川ではくつろげるだろう、
そして一本として同じ川は無い、
水温、流れが違う川では、
おのずとして遊び方は変わるだろう、
その流れに乗り遊ぶ、
それがBARの楽しみだと私は思う、
その店にはその店の流れがあるのだ。
その店の流れを変えてはいけない、
身を委ねなければ、
何故ならその川には、
アクアヴィッテと呼ばれる。
命の水が流れているのだ・・・