黄昏ウイスキー  TWILIGHT WHISKY

大阪は京セラドーム前の小さな本格的BAR「BARin」の日記 

幕末の倭魂(やまとだましい) 「堺事件」  4

「走れ!梅吉」

「神戸事件」「錦旗紛失事件」を経て、
歴史は「堺事件」へ、
堺の町にフランス兵が来ると、
そこで大目附杉紀平太、目附生駒静次が
土佐八番隊隊長「箕浦猪之吉」
土佐六番隊隊長「西村佐平次」を従え、


「大和橋」に向かう、
当時は外国の方が来る場合は、
前もって外国事務係前宇和島藩主「伊達宗城
から通知があるはず、それがない場合、
又、通知が間に合わない場合も、
内地を旅行するには免状(パスポートのようなもの)
を持っていなくてはならない。
持っていないなら、通す訳にはいかない、
当たり前の事だ。



そこへフランスの兵が現れた。
通訳に免状があるのかと問うと、持っていない・・・
この時はフランスの兵は小人数だったので、
ここは土佐の兵が食い止め、大阪へ引き返した。
しかし、この土佐藩士達なのだが、
堺にさしてや縁もゆかりも無かったと思うのだが、
朝廷の命とは言え、
何たる毅然とした態度だ。


と、そこまでは良かったのだが、
諦めの悪いのはフランス、
同日の夕暮れの事だった。
大和橋から、帰った歩兵隊の陣所に町人が駆け込んで来た。

「フランスが来た。フ、フランス人が・・」
20隻のボートで、水兵たちが上陸、
この下り正確かどうかは定かで無いが、
多くの記述がある。
暴力こそ振るわなかったが、
勝手に民家に入ったり、
神社仏閣に不遠慮に立ち入ったり、
怯える婦女子を追い掛け回した等と書かれている。


そんな光景を龍馬が後輩、
箕浦猪之吉」「西村佐平次」の二十代の青年隊長が見れば、
どうなるか、想像がつくのだが、
彼らはフランス兵に船に帰るように諭す、
しかし、言葉が通じない、
フランス語だからだろう、
通訳も居ない、
身振り手振りで、しかし伝わらない・・・


仕方なく捕縛しようとするが、
いや、当たり前だ。お前たちの国では無い、
が逃亡、その時なのだが、
フランス兵の一人が、
町屋に立てかけていた。
隊旗をふざけて持ち去った。
またもや旗を盗んだ。



「神戸事件」の後の「錦旗紛失事件」
またもや盗賊フランス、
多分、このあたりで「箕浦猪之吉」の怒りは頂点に達したはずだ。
私も完全に頭に来た。


旗を振り逃げるフランス兵、
完全に馬鹿にしてやがる。
小柄な日本人、体格の差は歴然、
しかしこの時、この隊と同行していた者がいた。
鳶の「梅吉」
藩士だけでは人手不足なので、
人足の手だれが居たようだが、


この梅吉が並の男では無かった。
何と馬にも一歩も引かぬ速さで走る事が出来ると言う、
「あっしが行きましょう」と
電光石火のごとき速さで飛び出した梅吉
走る走る。逃げる逃げるフランス兵、
ボートに乗ろうとするが、ついに追いついた梅吉
持っていた「鳶口」
これは鳶職が持つ鎌のような道具で、
振り下ろし丸太等に突き刺し、
引っ張る事等が出来るのだが、


天高く鳶口を振りかざした梅吉
「旗を返せ!」
目にも止まらぬ速さで、
フランス兵の頭に一撃!
声を上げ倒れるフランス兵、


即死させてしまう・・・
そして旗を奪い返す。
鳶口にも色んな種類があるが、
中には刃先の長い物もある。
そんな物で叩かれたら、
右脳、左脳を越え脳下垂体の海馬まで届いたのでは・・・


梅吉恐るべし・・・
が、この男の心情も解る。
何故ならこの男、
「旗持梅吉」と呼ばれていた。
鳶頭だったのだ。
この旗を持つ役目が梅吉だったのだ。


この旗は梅吉の旗なのだ。
梅吉にとってはとっても大事な旗なのだ。
いや大事と言うより、名誉だったのだろう、
しかし、これが決定打となり、
フランス兵との開戦が始まる。


しかし開戦させたのは鳶の梅吉で、
武器は鳶口だった・・・


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