黄昏ウイスキー  TWILIGHT WHISKY

大阪は京セラドーム前の小さな本格的BAR「BARin」の日記 

昭和の味が・・・

忘れたい事、忘れてはいけない事、
忘れたくても忘れられない事・・・
そういう物が絡み合った鎖のように、
体を締め上げていた。


昼時は過ぎていたが、
自転車を走らせ、
空腹のまま、さすらう事に、


初夏の日差しが眩しい時に、
ハルピン・・・
何だか店名がよく解らない看板が出ているお店が、
中華料理屋さんのようだ。


まあ、いいかと、
古めかしい喫茶店のような扉に手を、
中もやはり、
喫茶店をそのまま、
いや、強引に中華料理屋さんにしたようだ。
しかし、だからと言ってあなどれない、


メニューを見ると、
値段が少し高い、が、その方が期待が膨らむ、
しかも、店員さんも店主も中国人のようだ。
もしやこれは、では「酢豚」を、
若い時、数年間色んな店を回り、
「酢豚」を食べ続けた事がある。


中華料理もBARと同じく、
店によって味が違う、
その中でも、中華料理に関しては、
私は「酢豚」と「餃子」
この2品で判断している。


料理やカクテル等も、
美味い、不味いでは無く、
自分との相性だと思う、


等と考えていると、
「酢豚」が来た。
色合い、赤みの少ない、
美しい黄金色、
一目見て解る優しさを醸し出している。


しかも玉ねぎ、ピーマンの角が立っている。
手際の速さが滲み出ている。
私の考える「酢豚」の美味さは、
脂身の美味さ、ここも美味しく食べれたら、
と、一口、
う、美味い・・・


思った通り、優しく味が薄く、
見事な繊細さ、これなら夏でも食べれるだろう、
最近はどこも、ビールを飲まそうとしているのか、
繊細な味が解る人が減ったのか、
味が濃く、妙に喉が渇く、
しかしこの味には押し売りが無い、


思わずビールを、
それを一口、体に流し込む、
何とも言えないハーモニーを奏で出した。
それに聞き入っていると、
「餃子」が、
これも、一目見て解る。


色、艶共に日本食のような繊細さを放っている。
箸で掴むと、とろけるような柔らかさ、
やじろべえのように、両端が下がる。
水分が多い、それを落とさないように口に、


思わず声が出た。

「昭和や・・・」
懐かしい昭和の味が口の中に広がった。
いや、食感と言った方が正確だろう、
長屋の小さな一室、
見よう見真似で、貧しい家族が熱い視線を、


フライパンに注ぎ、
餃子のような物を焼く、
水を入れ、蒸気が立ち上る、
それが嬉しいのか、
水を入れ過ぎ、


水っぽくなった餃子のような物、
しかし、それはそれで、妙に美味しかった。
そんな餃子に、数十年振りに出会った。
君はここに居たのか、こんなに近くに、


しかし、この餃子の水加減は絶妙、
しかも、これは肉汁、
神業に近い、これをベチョベチョの餃子だと言う人とは、
多分、仲良くなれないだろう・・・
何気ない、この何気なさが奥が深い、
次々とその昭和の味をほおばり、
何もかもを忘れ去った一時だった。


美味しい食べ物が持つ、
不思議な力に頭が下がった。
初夏の昼下がりのひとコマだった・・・・




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