この前、「寅さん」の話をした。
私が「寅さん」の歌「男はつらいよ」
の2番を聞くと涙が出ると話したが、
それには訳がある。
私には兄がいる。
驚かれるだろうが、
年が16才程離れている。
魚釣りが好きで、バイクが好きで、
私に多大な影響を与えた人物なのだ。
兄は長く柔道をしていた。
そのせいで、がっちりした体格になった。
又、そのせいで私は無理矢理、剣道をさせられた。
母が、兄のその体型を忌み嫌ったからだ。
兄は少し変わっていた。
60〜70年代初頭、学生運動等で、
自衛隊等への風当たりが強い時代に、
自衛隊に入ると、
どうも、潜水艦に乗りたかったようだ。
戦争経験者の父は許さなかった。
兄は仕方なく、
家業である小さな電気屋さんを継ぐ事になった。
そして兄が結婚すると、
父は電気店を兄に譲った。
別に怠け者でも無く、
酒もさほど飲まなかった。
しかし色んな事に手を出し、
失敗したのだろう、
ある日突然居なくなった。
莫大な借金を残して、
その後、私達一家は文章には出来ない程の地獄を見た。
幸い父には兄弟が多く、父は長男だった。
有難い事に皆、少々裕福だったので、
お金を工面してもらった。
今の金額にすると相当な額だ。
父は妹に怒られるのが嫌で、
そのお金を受け取る時、
幼い私を連れて行った。
私が居ると酷く言われないと思ったようだ。
恐ろしい男だ・・・・
流石に父と二人、帰りの車中、
会話は無かった・・・
あれから、もう30年以上になる。
どこでどうしているやら、
そんな兄なのだが、
私はいつかは成功して、
帰ってくるのではと、
宝くじのような夢を見ている。
母が良く兄の事をフーテンと言っていた。
その影響か兄が「寅さん」のように思えるのだ。
だから、
「ドブに落ちても根のある奴は
いつかは蓮の花と咲く・・・」