黄昏ウイスキー 

大阪は京セラドーム前の大人の小さなBAR「BARin」の日記 

酒通信 思い出の酒、、、ドラマ バーテンダー4話

思い出の酒、
人それぞれにあるだろう、
あなたにもありますか?
ドラマ「バーテンダー」第4話にその酒は出ていた。


思い出の酒、
それは、「BARラパン」に「カンニング竹山」氏演じる。
「北方」という人物が入って来た時だ。
その時、相葉君が手に持った酒を見た瞬間、
画面がぼやけ、涙が溢れた出した。
何故それを持っている?
何故持っているんだ!
原作を全く読んでいない私は、
驚きと共に、
行き場の無い、怒りがこみ上げた。
見たくはなかったのだ。
相葉君の手の中に入った。
形だけで解るその酒の名は
シャルトリューズ・イブ」、、、
もうこれ以上は書きたくないのだが、
それでは私の行き場のない感情の、捨て場所が無い、、、


ドラマに出て来るような、
東京等の華やかな、場所にある。
カクテルコンテストで、活躍された
バーテンダーの方々のいるようなお店とは逆に、
当店は、大阪の片隅で、ひっそりと、
しかも、環状線の高架下の、ボロイ店だが、
そんな店に、その酒はあった。


「エリクシール・ヴェジタル・ドゥ・ラ・グランド・
シャルトリューズ
最初のEと、ヴェのVEを取って、
通称「イブ」と呼ばれる。
70度を超える強烈な酒だ。
900年以上の歴史を持つ、
シャルトリューズ修道院の秘蔵の逸品、
酒屋の営業の方に、頼まれて買ったが、
正直、度数も値段も高く、
出しにくい酒だった。


たった一人だけ、飲まれた方がいた。
彼は、ほぼ毎日のように現われた。
アブサン」等の、薬草系が好きだったので、
薦めてあげた。ドラマのように、角砂糖では無く、
ソーダーに少量垂らし、ソーダー割にした。
ドラマで、魂の癒しという、セリフがあったが、


若い時、読んだ本の中に、
バーテンダーたるや、心療内科医であれ」
と書かれていた。
それから、素人ながらも、
医学の本や、心理学の本を沢山読んだが、
やはり経験だ。経験を積めば、
お客様の精神状態は、解るようになる。
とくに、悩める人はよく解る。


その一人が、彼だった。
彼は、20代半ばの青年で、
かなり、酒が強く、気丈には振舞うが、
神経の細い子だった。
そして彼は、悩んでいた。
人生の道を失い、もがいていた。


ドラマのような意味合いで、
お出ししたのではないが、
奇しくも同じような内容となった。
そして、酒は無くなり、その瓶は空いた。


殆ど彼が飲んだ。
彼は、その変わった木のケースが欲しかったのだ。
私は快く、差し上げた。
「又、買いますか?」と聞かれた。
「飲まれるのなら、買いますよ」と、答えた。
その年の春、彼は悩みに悩み、もう一度大学に戻る為、
勉強をし直すと、一度、実家のある富山に戻った。
又、戻って来ると、言い残し、
それから、その酒を買う事は無かった、
何故なら、
夏が過ぎた頃だった。
彼は死んだ、、、、


死因は自殺だ


この連絡を受けた時、
私は床を殴りつけた。
彼に腹が立ったのではなく、
自分の無力さに嘆いたのだ。
少しばかり、人より酒を知っているからと言って、
少しばかり、人よりカクテルが作れるからと言って、
何も出来ない、、、、
人も救えない、いや救えるなど元々、出来るはずもない、
しかし私は、少なからずもその可能性に、
気付いていた。その事が、悔しかったのだ。


人が何と言おうと、私のミスだ。
多分、そうなる事を気付いていたのは、御両親でも、友達でもなく、
私だけだったからだ。
なんて無力なのだ。バーテンダーとは、
解かっていても、何も出来ない、
ドラマでは上手くいくが、現実はそうはいかない、
私は、三流どころか、糞だ、、、
ただの路傍の糞だ、、、


私は解っていた。だから、気にかけていた。
彼をキャンプにも連れて行き、
ホームパーティーにも必ず招いた。
それなりに努力した。
それなりにだ。それなりなんだ。
それなりだったから、救えなかった。
もっと、もっと、情熱を傾けるべきだったのだ。
今から思っても仕方ないが、もっともっと出来たはずだ。
それから、酒に溺れた。バーテンダーとしは最低だが、
どん底に落ちた、、、


沢山の人に迷惑を掛けた。
見捨てられた人達も沢山いる。
しかし、彼は、私のそんな姿を見たくは無いだろう、
這い上がって来た。少しづつ、
このドラマのこのシーンは、
彼からのメッセージかも知れない、
そう思った瞬間、号泣してしまった。


えべっさんに連れて行った時の、
彼の笑顔が、未だに忘れられない、、、、


彼は今、日本海を見渡せる小高い丘の上で、
眠っている。